クラッドメタル製調理器具の多層膜の測定
背景
家庭やレストランで使用される一般的な鍋の多くは、金属多層膜の構造をしています。 ステンレス鋼は洗いやすくて食材と反応しませんが、調理器具としては、特に厚手の調理器具としては、熱伝導が理想的ではありません。 アルミニウムや銅は熱を短時間に効率よく伝えますが、トマトや柑橘系の果物などの食材と反応しやすく、ステンレス鋼より高価です。 そのため、クラッドメタル製の調理器具が開発されました。本体はステンレス鋼で作られ、底部分はコアとなる厚めの銅またはアルミニウムを通常1 mm(0.040インチ)未満の薄いステンレス鋼2枚ではさんだ構造になっています。 熱伝導性のよいコアが鍋の底全体に最適な熱分布をもたらす一方で、食材と接する部分は、反応しないステンレス鋼になっています。ステンレス鋼により、見た目もよくなります。
クラッドメタル製調理器具の製造業者は、品質管理のために、底部分を構成する3層の厚さをモニターする必要があります。 これは従来、破壊検査(鍋のサンプルを切断し、断面観察により膜厚を測定する)により行われてきました。 しかし、超音波探傷試験なら、断面の見えるサンプルを用意する必要がなく、非破壊で膜厚を簡単かつ正確に測定できます。
測定法
高周波の音波は、異なる物質の境界で反射します。 クラッドメタル製の鍋の底にカップリングされた超音波は、内側の面の他に、クラッドメタル/コア境界およびコア/クラッドメタル境界でも反射します。
超音波計測器は、エコー間の時間差を正確に測定し、プログラムされた各金属中の音速を利用して各膜厚を算出します。
機器
マルチ測定ソフトウェアオプションを備えた超音波厚さ計38DL PLUSでは、クラッドメタルの厚さ、コアの厚さ、および全体の厚さを同時に測定でき、最大限の効果を発揮します。 クラッドメタル層のみを測定する場合は、35DL計測器を利用できます。 測定対象の具体的な厚さにより異なりますが、一般的には、遅延材付き探触子M208-RM(20 MHz)またはM202-RM(10 MHz)が使用されます。
一般的な手順:以下の波形は、一般的なクラッドアルミニウム製調理鍋のクラッドメタル層とコアの厚さを、探触子M208を使用して同時測定した結果を示しています。 この場合の測定結果は、外側表面とクラッドメタル/コア境界を示す2つのエコーの間隔、コアの両面を表す2つのエコーの間隔、およびコア/クラッドメタル境界からのエコーと鍋の内側表面からのエコーの間隔で構成されています。 あらゆる超音波膜厚測定と同様に、測定結果の正確さは適切な音速校正に依存しています。 音速校正は、厚さの分かっているサンプルを用いて、測定対象の物質ごとに行う必要があります。