アプリケーションノート
ポータブルX線回折(pXRD)による金探査
野外でもコア倉庫でも、地質学者は鉱物の詳細を見る際、拡大鏡に頼らざるを得ない場合が多々あります。 金鉱化作用に伴いしばしば発生する微粒性の変質が原因で、地質学者の目視による評価は主観的になり、誤る確率が高くなります。 そのため、試料は岩石の組織分析を行うために、現場からラボに送られることになります。 この手順には時間と高い費用がかかる上、発生源が大きく異なる鉱物(地下水や鉱化流水によって形成されるなど)を区別できない場合があります。 さらに、粘土、炭酸塩、微粒硫化物など、類似する鉱物の区別は、顕微鏡でもとても困難です。
オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)では、地質学者は野外、掘削装置のそば、コア倉庫内のどこでも、ほぼリアルタイムで信頼性のある定性的、定量的な鉱物データを得ることができます。 従来の方法では情報が主観的で、取得に数週間または数カ月かかるのに対して、pXRDで得られる情報は客観的かつ迅速です。
オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)を使用すれば、地質学者は以下のような重要な決定を短時間で行うことができます。
- 掘削穴を掘り止めるか広げるか
- 次の掘削穴の位置
- 領域内でのマッピングを継続するか否か
鉱物定量分析では、変質のベクトル化のほかに、将来的な鉱山設計に役立つ重要な地質冶金学的情報や選鉱情報も得られます。
オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)には、NASAのMars Science Laboratories(MSL)ミッション向けに開発された特許技術が用いられています。 電荷結合素子(CCD)が内蔵されており、X線回折データと定性的な蛍光X線分析データを同時に収集できます。
オリンパスの革新的なポータブルX線回折装置(pXRD)の利点は以下のとおりです。
- 少量の試料で測定: 必要な鉱物の量はわずか15mg
- 試料の前処理が容易: 熟練技術者は不要
- 高速のデータ収集: 数分で測定結果を取得可能
- ポータブル性: バッテリー駆動式で可動部品のない安定した堅牢設計
- スタンドアローン装置: 水冷や大型の外部電源が不要
- メンテナンスが不要: ダウンタイム無しで定期的にXRD分析を実行可能
図1: 浅熱水金鉱床全体の変質モデル。 変質岩相は、オリンパスのpXRD装置から得られた鉱物定量分析データを使用して開発およびマッピングされたものです。
オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)では、試料の準備に複雑な手間をかけることなく、現場で定量的な鉱物情報を取得することができます。 オリンパスのpXRD装置における定量性能について、一般的なラボ用の大型XRD装置(4kW)と比較しました(図2)。 その結果、オリンパスのpXRDシステムとラボ用のXRD装置とで強い一致が見られました。
図2: ラボ用の4kW XRD装置(X軸)とオリンパスのpXRD(Y軸)装置からのXRDトレース(20分の実行時間)により推定された、鉱物間のパーセンテージに関する優れた相関関係 (2015年、Burkettらによる)。
データ収集時間は、ラボ用XRD装置との比較だけでなく、さまざまな収集時間におけるオリンパスpXRD装置の性能を評価するためにも行われました。 一つの試料を異なる時間で試験した回折データを図3に示します。 図4と表1は、異なるデータ収集時間の定量結果をまとめており、それぞれの装置における一定した結果を明確に示しています(5分の実行時間においても一定)。
図3: ラボ用4kW XRD装置と、さまざまな収集時間のオリンパスpXRDにより収集されたXRDトレース
表1: ラボ用4kW XRD装置と、さまざまな収集時間のオリンパスpXRD装置における、定量的XRDの結果。
試験条件
| 試験条件 | |||||
| 鉱物 | ラボ用XRD | pXRD – 40分 | pXRD - 20分 | pXRD - 10分 | pXRD - 5分 |
| 黄鉄鉱 | 0.8 | 0.8 | 0.1 | 0.0 | 0.0 |
| 方解石 | 6.1 | 5.4 | 7.1 | 8.1 | 8.4 |
| 氷長石 | 12.7 | 12.0 | 13.7 | 13.1 | 13.0 |
| 曹長石 | 44.6 | 43.4 | 46.6 | 45.6 | 44.4 |
| 白雲母 | 4.2 | 6.9 | 6.3 | 6.0 | 7.3 |
| 緑泥石 | 18.1 | 18.1 | 14.2 | 15.5 | 15.5 |
| 石英 | 13.5 | 13.5 | 12.1 | 11.6 | 11.4 |
図4: 図3のXRDトレースから推定される、鉱物間のパーセンテージの比較。 オリンパスのポータブルX線回折装置(pXRD)は、短い測定時間であるにもかかわらず、ラボ用装置との強い相関があることに注目してください。
この用途に使用される製品
https://main--eds-evident-website--evident-scientific.hlx.live/ja/xrf-xrd/mobile-benchtop-xrd/terra/
TERRA™ II ポータブルX線回折装置
TERRA™ IIは、鉱物の定量分析を行えるポータブルX線回折装置です。 最大6時間のバッテリー寿命と丈夫で防水性に優れたケースを特長とするこの装置は、主要成分や微量成分をフィールドで迅速に分析できるように設計されています。
https://main--eds-evident-website--evident-scientific.hlx.live/ja/xrf-xrd/mobile-benchtop-xrd/btx/
BTX™ III卓上型X線回折装置
BTX™ IIIは、鉱物の主要成分や微量成分を分析できる省スペースの卓上型X線回折装置です。 高性能ソフトウェアと改良されたX線回折装置を組み合わせることで、スピードと感度が向上しています。