位相コヒーレンスイメージング(PCI)の 5 つの主な特長

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Trevor Tartaglia

2022年7月21日

フック欠陥、フック亀裂、微細な応力腐食割れ(SCC)など、従来検出が困難なきずを明確に表示する当社の位相コヒーレンスイメージング(PCI)技術は、OmniScan™ X4 超音波フェーズドアレイ探傷器の全てのモデルに搭載されています。

MXU ソフトウェア(5.13)の無料アップデートで導入された PCI は当初、OmniScan™ X3 64 で利用可能になりました。PCI の生成に必要とされる複雑な焦点法則とアルゴリズムを処理する能力を備えていたのは、X3 64 モデルのみでした。現在では、OmniScan X4 の全てのシリーズで、小さなきずに対してもこれまでにない感度で PCI を生成する性能が備わっています。

PCI の仕組みと他の超音波探傷法との違い

PCI は振幅に依存しない技術です。その信号処理は、TFM画像を生成するために使用される基本Aスキャンにおける位相情報のみに基づいて行われます。

PCI の仕組み:

当社試験において、PCI は溶接部検査などの一般的な使用例での結果が向上したほか、多くの難しい用途でも優れた結果を示すことが証明されました。以下に、この新しい検査方法を支えている 5 つの特長についてご紹介します。

1.信号の位置情報を使用したライブ 2D 画像

超音波探傷(UT)ユーザーは、TOFD法などの技術を用いて、信号位置情報を活用した、きずの識別や寸法測定を行うことに慣れていることでしょう。このような手法は、フェーズドアレイ(PA)では検出が難しい、非常に小さなきずや一方向へのきずを識別する場合に有効です。

ただし、TOFD には次のような欠点が 2 つあります。

PCI は、方向性が不十分であったり非常に小さかったりする高温水素侵食(HTHA)などのきずの識別に優れた手法で、TOFD に関連する問題が回避されます。TFM は体積データを取得するため、きずをあらゆる方向から特定し、その大きさを測定できます。また、PCI モードを使用した最終画像は、振幅にはまったく依存していません。

複数のインデックスポイントでスキャンする必要がなくなるため、分析が容易になります。また、OmniScan X4 超音波フェーズドアレイ探傷器の PCI ではライブ画像が生成されるため、取得後の処理に完全な生データは必要ありません。

2.信号が飽和することがありません

振幅ベースの手法における課題のひとつが、信号の飽和です。設定時に校正とゲイン調整を行っても、特定の反射源によって信号が飽和する可能性があります。これは、校正ブロックまたは他の既知の反射体における側方ドリル穴(SDH)と比較して、そのサイズ、種類、または方向によるものです。

PCI は、画像内の特定の点における基本 A-スキャンの統計的分布の分散に基づいているため、相関レベルは 100 % を超えることはできません。基本 A-スキャンの信号が飽和状態でも、位置情報のみが考慮され、アクセス可能なことから、最終的な PCI データに影響はありません。

スキャンの品質は構成の影響をあまり受けないため、検査の準備が速く簡単になります。波形セットを選択し、電圧を160 Vpp(ピーク間電圧)に設定すれば、すべての準備が整います。

3.既知の反射源に対してゲインを事前調整する必要がありません

PCI は完全に振幅フリーの手法です。つまり、校正ブロックの既知の反射源を使用してゲインを調整する設定ステップが不要になります。OmniScan X4 の設定パラメーターで「位相コヒーレンス」モードを選択すると、ゲイン調整が使用不可になっているのがわかります。これは、最終的なPCI データに振幅が考慮されないためです。

ゲイン調整が必要ないので、高品質画像を生成する設定の作成にかかる時間と手間が大幅に削減されます。スキャン間のゲイン調整は、検出された反射体の種類に基づいて行う必要がなくなり、データが有効であることを確認するために TFM スキャンを繰り返し行う必要が軽減されます。

PCI 設定の寸法精度は検証しますが、ノッチサンプルを使用して行います。ノッチからの端部回折応答のピークを使用することで、カーソルを用いてきずの高さを測定できます。

Validating the sizing accuracy of a notch in a calibration block using the PCI technique on the OmniScan X3 64-channel flaw detector

4.より一貫性のある結果と測定のしやすさ

PCI 設定は、検査員が設定するパラメーターが少なく、作成が簡単で迅速であるため、検査間および異なる検査員間の検査結果の一貫性を向上させる技術です。スキャン中に信号が飽和することがなく、ゲインが信号に影響を与えることもないため、分析中に結果を変える可能性がある操作は少なくなります。

きずを測定するには、端部回折からホットスポットを見つけて、ホットスポットの最大部にカーソルを置くだけです。これらの測定値からきずの大きさがわかるので、測定のたびに事前調整する必要がありません。処理は簡単で迅速になります。

Using the tip diffraction hot spots in TFM phase coherence mode to size a defect on the OmniScan X3 64 device

同じプローブを使用する場合、きずの大きさは各スキャンで同じになります。

5.同じエリアをカバーするために必要なグループ数が減りました。

スキャンプランの Acoustic Influence Map(AIM)ツールはPCI でも使用します。従来の TFM と比べた PCI のメリットは、AIM で表示される信号振幅の変動が無関係な点です。AIM で部品内の信号分布が表示される場合、返される振幅が小さくても、PCI の結果は良好です。

これは振幅フリーの性質を持つ PCI の副次的効果です。位相の評価前に信号が標準化されるため、振幅が弱くてもコヒーレンスは評価できます。さらに重要なことに、TFM ゾーン内のきずの位置が信号コヒーレンスに与える影響は、振幅よりも小さくなります。

従来の TFM やフェーズドアレイを使用する場合、端部回折がバックグラウンドノイズに紛れてしまうことがよくあります。それに対してPCI では、端部回折が強調表示され、従来の TFM や PA では不明瞭な場合でもはっきりと見えます。

これらの要因すべてが、同じゾーンカバーに必要なグループ数を減少させます。

PCI は振幅ベースの手法ではないため、構成や設定パラメーターを選択する際の方法を変える必要があります。使い慣れた他の UT 手法とは異なります。当社「位相コヒーレンスイメージング(PCI)入門ガイド」で、推奨されるベストプラクティスをご覧ください。また、PCI に関するよくあるご質問をご参照いただくか、デモ予約についてはお近くのエビデントの担当者までお問い合わせください。

ブログ記事は2022年7月21日に最初に公開され、2024年10月24日に更新されました。

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Trevor Tartaglia

製品アプリケーションリーダー

Trevor は、カナダ軍で 4 年間軍務に服した後、ラヴァル大学で工学物理学を専攻し、材料科学を専門分野として学ぶ選択をしました。2020 年 2 月、Trevor は、当時 Olympus Scientific Solutionの産業部門(現エビデント)の開発部門に入社しました。2 年後に製品アプリケーションチームに移り、現在、OmniScan™ X3 シリーズの探傷器製品アプリケーションリーダーを務めています。