貴金属分析ガイド

James Parker

June 16, 2026

金品位分析 誤った分析が大きな損失を招く市場での、明確な判断基準

金価格は過去最高水準まで高騰しており、その価値が高まる一方で、分析や査定を誤るリスクもこれまで以上に大きくなっています。 価格が過去最高値を更新することで、市場は素早く反応し、金の取引量が増加するとともに、新たな供給者も現れます。

必然的に、これはより多くの偽造品がサプライチェーンに流入することを意味します。

貴金属取引業者、精錬業者、宝飾業者、質店にとって、誤った判断による損失は、これまで以上に大きくなっています。 これらのリスクを回避するには、単一の機器や分析だけでは不十分です。 分析対象を正しく理解し、それに適した分析手法を見極め、それらを適切に組み合わせることで、真に信頼できる分析結果を得ることができます。

「ボタン一つで完結する」金分析法は存在しません。
金分析で重要でありながら、誤解されやすいポイントがあります。 単一の分析手法や分析装置、技術だけで、金の真贋を保証することはできません。 信頼性の高い判定には、各分析手法の「できること」と「できないこと」を理解し、目的に応じて適切に組み合わせることが重要です。

これは特定の分析技術の限界ではなく、今日の精巧な偽造品の実態と、各分析手法の原理に基づく避けることのできない現実です。 複数の分析手法を組み合わせることが、効果的な金分析の基本となります。

破壊試験と非破壊試験による金の分析

金の分析は、主に「破壊分析」と「非破壊分析」の 2 つに分類されます。 それぞれの分析手法の特徴を理解することが、業務に適した分析フローを構築するうえで重要です。

破壊試験: 最高精度の一方で非効率的

火試金法(灰吹法)、ICP、原子吸光分析は、現在利用可能な分析手法の中でも最も高い精度を誇り、金含有量を ± 0.05 ~ 0.1 % の精度で測定できます。 一方で、これらは破壊分析であり、専用の分析装置や設備が必要となるほか、1 試料あたりの分析に数時間から数日を要します。 毎日数十から数百ものサンプルを分析する現場においては、これらの手法は初期段階のスクリーニング用ではなく、最終的な判定を下すための手段となります。

非破壊試験: スピード、汎用性、そして実用上のトレードオフ

比重測定、導電率測定、超音波検査、蛍光 X 線分析(XRF)はいずれも試料を損傷させない非破壊分析手法です。 これらは、それぞれ複数の分析手法を組み合わせた分析フローの中で、異なる役割を担います。

導電率測定: 試料の化学的特性を補完的に評価できます。 測定結果は試料の温度や形状の影響を受けるため、主要な分析手法としてではなく、他の分析結果を確認するための補助的な手法として活用するのが適しています。

精度が真に意味するもの: ± 0.01 % という精度は現実的ではない

金分析において最も根強い誤解の一つが、蛍光 X 線分析計(XRF)による金分析で ± 0.01 % の測定精度が得られるという期待です。 実際には、そのような精度を実現できる市販の分析手法は存在しません 蛍光 X 線分析(XRF)の測定精度は、実際の分析環境におけるさまざまな要因によって制約を受けます。

実際には、10 秒測定・標準校正条件における蛍光 X 線分析(XRF)の現実的な測定精度は、およそ ± 0.4 % です。 用途に応じた校正と一貫した測定手順を適用することで、この精度は約 ± 0.2% まで向上します。 これらは現実的かつ信頼できる指標です。さらに、同等レベルの精度を持ちながら分析に長時間を要するラボ分析と比較しても、蛍光 X 線分析(XRF)は圧倒的に高いスループットを実現します。

刻印は表示に過ぎず、分析結果を保証するものではありません

金分析においてよくある誤りの一つが、刻印を絶対的な基準として扱うことです。例えば、蛍光 X 線分析(XRF)で測定した結果が刻印内容と一致しない場合に、分析結果の方を疑ってしまうケースがあります 刻印は法令や規格に基づく表示であり、分析結果そのものではありません 刻印は分析によって確認すべき情報であり、絶対的に正しい基準として信頼すべきものではありません。

品位 585(14K)の刻印が付された 68 点の製品を対象とした研究では、約 25 % が表示された純度と一致しないことが確認されています ※ 1。 さらに、刻印が適正な製品であっても、実際の金含有量は表示値から一定のばらつきがあり、表示値を上回るものもあれば、下回るものも確認されました。 一般的なイエローゴールド合金であれば、適切に校正された蛍光 X 線分析計(XRF)の分析結果は、刻印よりも実際の組成をより正確に反映します。

偽造品の手口と、その見分け方

現在の金の偽造品は主に 4 つのタイプに分類され、それぞれに適した検出方法が必要です。

複数の分析手法を組み合わせた金分析ワークフローの構築

宝飾店の店頭、質店、精錬所、貴金属取引の現場など、プロフェッショナルな金分析では、複数の手法を組み合わせたアプローチが、分析スピードと信頼性を最も高いレベルで両立します。 中空ではないジュエリーや投資用インゴットを対象とした、実用的な分析手順の一例を以下に示します。

1. 目視および磁石による検査: 明らかな偽造品をその場で見分けることができ、費用もかかりません。 金は磁石に反応しない金属であるため、磁石に反応する場合は追加の確認が必要です。

2. 蛍光 X 線分析(XRF) 金含有量(カラット・品位)の測定や合金元素の特定に加え、表面コーティングの検出や、測定した合金組成から理論比重および理論導電率を算出することも可能です。 初期スクリーニングに用いる分析手法として、最も迅速で、多くの情報が得られる方法です。

3. 比重測定: 試料の質量と体積から求めた比重が、蛍光 X 線分析(XRF)で測定した組成と一致するかを確認します。 比重計は比較的安価で操作も容易であり、市場に流通している偽造品の大半を見分けることができます。 内部が均一な試料であれば、この組み合わせだけで、多くのケースに対応できます。

4. 超音波検査: 高価な金インゴットや、内部構造・内部組成に疑いがある試料に適しています。 表面分析だけでは検出できない空隙、タングステン芯材、その他の内部異常を検出できます。

5. 導電率測定: 特に比重測定だけでは判断が難しい場合に、有効な補助的確認手法として活用できます。 ただし、測定結果は試料の温度や形状の影響を受ける点に注意が必要です。

ほとんどの分析現場では、蛍光 X 線分析(XRF)と比重測定を組み合わせることが、推奨される第一段階の分析方法です。 この組み合わせにより、現在市場に流通している偽造品の大半(最も一般的な金めっきによる偽造品を含む)を、1 試料あたり 1 分以内で検出できます。 このスクリーニングを通過してもなお疑わしい試料(特に高価な金インゴット)の場合は、次の確認手段として超音波検査を実施します。

蛍光 X 線分析(XRF)による金品位分析のポイント
ポータブル蛍光 X 線分析計(XRF)の性能を最大限に引き出すには、いくつかの基本的な手順を徹底することが重要です。

プロフェッショナルな金分析のための 5 つの原則

どのような分析手法を用いる場合でも、信頼性の高い金分析を行うためには、5 つの基本原則を常に意識することが重要です。

1. すべての偽造品を見抜ける単一の手法はありません。 蛍光 X 線分析(XRF)だけでも約 95 % の偽造品を検出できますが、見逃す可能性があるのは、往々にして最も高価な偽造品です。 こうしたリスクを補うには、複数の分析手法を組み合わせたワークフローが有効です。

2. 分析精度には現実的な限界があります。 最も高い精度を誇る火試金法であっても、達成できる分析精度は ± 0.05 ~ 0.1 % です。 蛍光 X 線分析(XRF)を含め、いかなる分析手法であっても、商業用途において ± 0.01 % の分析精度を実現できるという主張は現実的ではありません。

3. 蛍光 X 線分析(XRF)は表面分析です。 分析できるのは、試料表面から約 15 µm までの組成です。 そのため、特に表面コーティングが施されている場合は、分析結果が試料全体の組成を反映しているとは限りません。

4. 刻印はあくまで表示です。 刻印は分析によって確認し、分析計の測定結果を疑うための基準として用いてはいけません。

5. 分析精度は、一貫した分析手順によって支えられます。 分析対象を正しく理解し、適切に校正を維持し、品質管理を継続して実施することは、どの分析計の仕様よりも重要です。 分析計の電源を入れても、自らの判断を止めてはいけません。

貴金属分析ガイド:蛍光 X 線分析を活用した偽造品の識別、純度の検証、および作業の効率化

当社の専門家、James Parker と Vladimir Vermus による金分析ウェビナー

金業界においては、信頼が何よりも重要です。 しかし、その信頼は一朝一夕に築けるものではありません。 誤った判断が大きな損失につながりかねないこの市場で、確かな見通しを得るための方法を深く掘り下げた、当社のウェビナーをぜひご覧ください。

James Parker(プロダクトマネジメント・マーケティングリーダー) と Vladimir Vermus (ANI セールスマネージャー)が、現代の偽造品の構造と検出方法、蛍光 X 線分析に現実的に期待できる精度、複数の手法を組み合わせたワークフローの構築法、そして日々の業務で大きな差を生む蛍光 X 線分析のポイントやコツについて解説します。 本セッションには、実演デモンストレーションや、現場の金取引の専門家を交えた質疑応答も含まれます。

貴金属の売買業者、宝飾品業者、精錬業者、質屋、リサイクル業者、あるいは金品位鑑定士の皆様にお役立ていただける内容になっています。金合金の基礎知識や、正確な純度分析の手法、偽物やメッキ品を見分けるための注意点、密度測定やコーティング判別機能による査定の迅速化、そして Vanta GX 貴金属分析計の利点についてご紹介します。

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James Parker

Product Management and Marketing Leader, EMEA, Evident

With prior experience as an XRF user in industrial manufacturing before joining Evident in 2011, James Parker now leads product management and marketing for the EMEA region. His deep understanding of Evident’s XRF product portfolio makes him a key resource for both the company and its distributors. James provides advanced technical product and application support for the Western European distribution network and directs product management and marketing initiatives across Europe, the Middle East, and Africa. His expertise spans a wide range of industrial applications. He also supports legacy products, ensuring comprehensive coverage across Evident’s analytical instrumentation portfolio.

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Vladimir Vermus

Business Specialist, Analytical Instruments

Vladimir Vermus has a bachelor’s degree from Moscow Mining University and 10 years’ experience in portable X-ray fluorescence (XRF) analysis at Evident. He started as a sales engineer with four years in direct sales, then later managed the development of XRF analytical instrument sales in the Commonwealth of Independent States (CIS). Vladimir currently specializes in marketing, sales, and applications for XRF analyzers in Europe, the Middle East, and Africa (EMEA).