工業用内視鏡システムによる配管内部検査の効率化
配管検査における工業用内視鏡の活用
各種配管やチューブはエネルギー、プラント、公共インフラなど、多岐にわたる分野で使用されています。 その劣化や腐食の定期的な点検による早期発見は、重大な事故の発生を防止し安全に施設を運用する上で不可欠となっています。その検査には、目的に応じてさまざまな手法がありますが、配管内部の腐食や割れ、溶接不良などの状態を検査する方法として、工業用内視鏡を用いた目視検査が一般的に挙げられます。
工業用内視鏡は、医療用内視鏡の技術を工業用に転用、最適化した機器で、人の目の届かない、アクセスしにくい箇所を、非破壊かつ遠隔で目視観察できるのが特長です。 By inserting an industrial endoscope into an inspection area, real-time images of the target can be observed. 配管内の検査領域に内視鏡を挿入することで、検査対象の画像をリアルタイムで観察でき. 操作も比較的簡単で維持コストも低いため、導入や運用におけるハードルも低く、内視鏡検査や配管内部の検査において優れた手法といえます。
工業用内視鏡には硬性鏡やファイバースコープなど、観察方式によっていくつかの種類があり、用途によって使い分けられています。昨今では光学系にイメージャーや画像記録装置などが一体化された、ビデオスコープと呼ばれる機材が用途や分野に関わらず、広く一般的に使用されています。
ビデオスコープには挿入部の外径や長さなど、検査対象や目的によってさまざまな選択肢があります。配管内部の腐食や欠陥を確実に検出し、十分な検査品質を得るには、検査業務に適した内視鏡の選定が重要となります。 また、定期的な検査が求められるケースにおいて、検査の効率化につながる機能を有する内視鏡を選ぶことが、経済性の観点からも機器選定の際に考慮すべき要素です。
本ブログでは、配管検査を行う上で適切な内視鏡の選定のポイントと、配管検査における課題の具体例、およびその課題を解決する最新技術を備えた内視鏡で期待される検査の効率化を中心にご紹介します。
配管検査に適した内視鏡システム(ビデオスコープ)選定のポイント
配管の種類は多岐に渡るため、その内径や長さに適した内視鏡を選ぶことは、目的に沿った検査を適切に行う上で基本となります。 その上でビデオスコープを選定する上で考慮すべきポイントとして挙げられるのが、挿入性能です。
1. 挿入性能
高い挿入性能を実現する要素のひとつが、ビデオスコープ先端の硬質部の長さです。挿入部には、先端に一般的に観察部位に応じて交換可能な、観察レンズを含む光学アダプターが取り付けられ、その先端部を観察したい方向に湾曲させることができる構造となっています。エルボがある場合、先端部を湾曲させながら挿入部を押し込んで通過させていきますが、光学アダプターを含む先端の硬質部の長さによっては、エルボ内部でひっかかり通過できない場合があります(図1)。先端硬質部が短い挿入部のほうが、エルボなど屈曲部通過のしやすさにおいて有利となり、総じて挿入性が高いといえます。
図1. 硬質の先端部の長さが適切でない場合、挿入部が詰まることがあります。
加えて、挿入性能を決定するもうひとつの要素が、挿入部の硬さです。仮にエルボのない直線の配管であっても、特に長い配管においては、挿入部の根元部分に一定以上の硬さがないと押し込む際の力が伝わりにくく、検査箇所まで到達できないことがあります。そのため、挿入部の根元部分に十分な硬さがあり、先端方向に向かって適度な柔軟性がある挿入部を持つビデオスコープが、挿入性能をはかる上で有利となります。
これらの理由により、、検査の第一歩となる、検査箇所へ確実に到達し、効率的に検査を行うには、短い先端硬質部を備えたうえで、狙い通りに湾曲操作を行え、挿入部根元部分のコシがありつつ、部位により硬さが異なり挿入性に優れた機構を持つビデオスコープの選定が基準のひとつとなります。
2. 観察性能
配管の種類に関わらず、ビデオスコープ観察時の画質は、不具合の検出率を大きく左右します。画質が低いと、不具合を検査中に見落としてしまうリスクが高まり、結果として大きな事故を引き起こし得る可能性があります。
ビデオスコープにおいて、光量、イメージャー、画像処理のすべてが画質を決定する重要な役割を果たします。つまり、これらすべてが高度に融合されていることが、高い不具合検出率を実現するために必要な高画質を提供できるビデオスコープの条件となります。加えて、検査対象や用途に合わせて画像を最適化するように調整可能な、シャープネスや色温度調整、ノイズ除去機能などを搭載したビデオスコープを選定することで、欠陥を見落とすリスクをさらに低減することができます。
観察性能を決定するもうひとつの重要な要素が、観察レンズの性能です。高機能な内視鏡は一般的に、観察深度や画角、視野方向の異なる光学アダプターを豊富に備えています。用途や検査箇所に応じて近点・遠点、広角・望遠、直視・側視をそれぞれ選択することで適した観察を行うことができます。 例えば、直視の広角光学アダプターを用いて広い視野で配管内の全体像を把握し、配管内壁に欠陥が見つかったら側視・近点の光学アダプターに付け替えることで、検査対象のより詳細な観察が可能になります。
効率的な配管検査を実現するビデオスコープの先進機能
上述したビデオスコープ選定のポイントに加え、機種によっては、さらに高度な検査品質や検査効率化を実現する、先進の機能を搭載したものも存在します。
1. 天地方向に合わせたライブ映像
配管内部の内視鏡検査においては、内壁の特徴が似通っていることから、天地方向の感覚が掴みづらく、検査中に検査箇所の位置を見失うことがしばしば起こります。このため、検査な必要な検査領域を見落としてしまい、結果として欠陥の検出率が低下するリスクが発生し、内視鏡検査における大きな課題となっています。
これを防ぐ手段として、内視鏡先端に重力センサーを搭載し、挿入部の天地方向の向き、回転方向を視覚的に画面表示する機能を搭載する機種があります。それに加えて、ライブ映像の天地方向を実際の天地方向に合わせて自動調整する機能が備わっていることで、操作中の挿入部の向きに関わらず、直観的に天地方向を把握でき、欠陥を見落とすリスクも軽減されます(図2)。
図 2. 重力センサーにより、配管検査中は常に垂直方向が保たれます。
2. 観察視野方向や観察深度をワンタッチで切り替え
観察効率を向上させる要素として、用途や検査箇所に応じてそれに適した視野方向や観察深度を備えた機種、あるいは光学アダプターに切り替えることが重要であることは前述の通りです。一方で、同じ配管内でも観察箇所によって適切な光学アダプターが異なるため、その都度挿入部を引き抜いて、光学アダプターを付け替えるという作業も発生します。これは、配管検査で幅広く使用される外径6 mm 以下のビデオスコープでは、光学アダプターのサイズ、および構造上、観察深度・画角・視野方向は光学アダプターごとに固定されるケースがほとんどであるためです。そのため、単一の光学アダプターで観察深度や視野方向の切り替えを行えることが理想的となります。
一部の最新のビデオスコープでは、近点・遠点の視野角と、直視・側視の視野方向をそれぞれ持ち、ワンタッチで切り替え可能な機種も登場しています(図 3)。このような機能を持つ内視鏡を選定すれば、光学アダプター交換のために検査を中断し、挿入部を引き抜いて交換後、挿入し直すという作業が不要となり、大幅な検査時間の短縮と生産向上、ひいては検査コストの削減につながります。
図3. 最新の機種では、簡単なタッチ操作で観察方向や視野を切り替えることができます。
3. 3D 表示により欠陥箇所をあらゆる方向から確認
配管内壁の腐食や割れなどの大きさを、一定の基準値と比較して許容範囲にあるかを判定する必要がある検査工程の場合、計測機能を搭載するビデオスコープが、有効な選択肢となります。 ビデオスコープの計測機能は、ステレオ計測/位相計測 / マルチポイント計測などの方式があり、配管内部検査用途においては、手ブレの影響を受けにくく、反射率の高い被検体にも比較的適応性があり、複雑な形状の計測にも対応し、側視アダプター使用時においても先端硬質部長を比較的短くできることから、ステレオ計測が最も適した計測方式となります。
なかでも、計測対象を 3D 表示できる機能を持つ機種であれば、2D 画像では把握しにくい検査部位の形状も、あらゆる角度から確認することが可能になります。加えて、計測を行う場合でも、3D で表示されることで計測点の指定を適切に行えるため、計測結果の確からしさが高まるのと同時に、やり直しが減少し、検査時間が短縮されます。
また、減肉などの内壁からの深さを計測する場合でも、安定した計測結果を得るには基準面を適切に設定することが重要ですが、 配管内壁のように湾曲している場合は、正確な基準面設定が特に困難です。
湾曲した面を基準面として設定する場合に、指定された点を基準に自動的に曲面の形状を把握し、基準面が設定される機能を持つ機種であれば、基準面設定において正確性を欠くリスクも軽減し、より簡単にすばやく、深さの計測が可能になります。
さらに、指定した基準面をベースとした高低差を 3D カラー表示することで、最深点の視覚的な把握が可能となり、安心して計測点を指定できます。加えて、計測指定領域において、最も深い場所、最も高い場所を自動的に算出して表示する機能があれば、検査領域表面の形状に関する正確なデータの提供が可能になります(図4)。
図 4. 3Dイメージングは、指定された領域内の最も深い点と最も高い点を算出し、正確な検査領域のマッピングを実現します。
4. 高い色再現性や適切な明るさ調整をサポートする画像処理機能
配管内の錆こぶなどの検査対象部位は、その形状や大きさの把握のみならず、その色が不具合判定の基準になる場合があります。そのため、内視鏡を用いた検査において、配管内部の色再現性の正確さが、適切に不具合判定を行う上で重要です。
機種選定において、暖色から寒色まで、細かい段階で色温度を調整でき、かつライブ映像でその結果を確認できる画像処理機能を持つ機種を選ぶことで、不具合判定の確からしさがより担保されます。また、色温度調整機能を活用して、暖色系の色味を強調するように設定を調整すれば、錆などの発見が容易になると同時に、見落とすリスクも軽減することができます(図 5)。
図 5. 色温度を調整することで、錆びやその他の欠陥を目立たせることができます。
さらに、ステンレス鋼管やサニタリー配管、グラスライニング配管など、内壁が高い反射表面を持つ場合、内視鏡の照明が反射しハレーションが起こり、検査が困難になることがあります。そのため、照明の明るさを検査対象までの距離に応じて調整しなければなりませんが、ハレーションの影響がない程度に照明を落とすと、配管内の奥まで照明が届かず検査効率が低下してしまうケースがあります。
ビデオスコープの機種によっては、プロセッサーが照明システムと連動し、検査対象に挿入部先端が近づくにつれて、ハレーションを起こさず観察が可能な程度に照明を自動的に調整する機能が備わっており、これにより手動で調整するわずらわしさを経ずに、検査に適切な映像を得ることができます。 加えて、幅広いダイナミックレンジに対応し、ハレーションを防ぐために照明を抑えた場合でも、暗い箇所の可視性を保つ画像処理技術を持つ内視鏡であれば、配管内の手前から奥まで広い範囲で、適切な検査判断をサポートし、検査の効率化に貢献します。
おわりに
本ブログでは、配管内目視検査に適し、効率的な検査を実現する内視鏡システムを選定する際のポイントを中心にご紹介してきました。ここでで紹介した内視鏡ソリューション以外にも、筐体のサイズや重量、取り回しなども検討要素となりますが、上述したポイントを多くカバーする内視鏡を選定することが、配管検査を効率的に実施し、施設の安全な運用を行う上で有益です。
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