OmniScan™ X4 128:128PR は複雑な検査においてどう役立つのか:Paul Hayes 氏の洞察

ノイズの多い鋳造オーステナイト系ステンレス鋼校正試験片におけるアレイの S/N 比評価

Emilie Peloquin

Emilie Peloquin

2025 年 12 月 9 日

Sinewave Solutions のオーナーである Paul Hayes 氏は、原子力や電力、航空宇宙をはじめ、安全性が極めて重要な産業分野において、25 年以上にわたり非破壊検査に携わってきました。本稿では、同氏の豊富な現場経験をもとに、フェーズドアレイ技術と OmniScan™ X4 128:128PR のような多チャンネル探傷器が、従来困難とされてきた複雑な検査をどのように変えてきたのかを紹介します。

※ 特許出願中

Q:ご自身のキャリアを通じて超音波検査技術がどのように進化してきたと感じますか?また、それらの変化が携わっている産業にどのような影響を与えたとお考えですか?

A:1990 年代半ばから、原子力発電所をはじめとする重要産業分野に携わってきました。原子力関連での最初の仕事は 1996 年にナインマイルポイントで、当時は全てが従来型の A スキャン探傷器で行われていました。振り返ってみると、当時の限られたツールでも成し遂げられたことが多かったこと、そして同時に単に 見えていなかった ものがどれほど多かったのかと考えると驚きです。

A スキャンからフェーズドアレイへ、そして OmniScan X4 128:128PR のような強力な 128:128 プラットフォームへと進化したことで、原子力、電力、航空宇宙、さらには 3D プリンタによる積層造形における最も困難な検査へのアプローチは大きく変わりました。

率直に言って、今ではこのレベルのイメージング能力なしでは当時と同じ検査に挑もうとは思いません。

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稼働中の OmniScan X4 128:128PR

「職人技」からイメージングへ:フェーズドアレイによる IGSCC の解決

私のキャリアにおける最初の大きな課題の一つは IGSCC(粒界応力腐食割れ)でした。これらのきずは検出が困難で、特に旧式の A スキャン装置では非常に難しいことで知られています。

Aスキャンでは、IGSCC の指示は鋭く細いエコーとして現れ、形状エコーとほとんど見分けがつきません。割れは 304/316 ステンレスの溶接ルート近傍に発生することが多く、そこにはもともと強いルートエコーがあります。大きなルートエコーが生じ、そのエコーのわずかな変化が、亀裂が生じているかもしれないという 唯一の 手がかりでした。そのため、割れの兆候は「エコーがわずかにずれる」「形が少し変わる」といった微妙な違いでしかありません。

多くの割れを見逃してきました。これは私だけではありません。

フェーズドアレイを導入した当初、検出性能が大幅に向上しました。単一のAスキャン波形をにらみながら微小な変化を解釈するのではなく、溶接部の体積を 「画像として見る」 ことができるようになったのです。Aスキャンでは見逃してしまうようなルート付近のわずかな変化も、画像上では「本来あるべきでない何か」として明確に現れます。

もう一つの大きな要素は ダイナミックレンジ でした。初期のフェーズドアレイ装置では、100 % や 200 % といった振幅範囲の制限があり、強いルートエコーで簡単に飽和してしまいました。信号を十分に減衰することができず、状況を把握できませんでした。現在の 16 ビットシステム や 最大 800% までの拡張振幅レンジ(最新の OmniScan プラットフォーム)では、以下が可能になります。

IGSCC においては、原子力分野で最も困難な検査の一つが、高ダイナミックレンジ実際の画像化 の組み合わせによって再現性があり、説明責任を果たせるものとなり、「職人技」や勘に頼る度合いが大きく減りました。

異種金属溶接とオーバーレイ:128:128 が真価を発揮する場面

私のこれまでのキャリアの中で最も困難だった検査は何かと聞かれたら、異種金属溶接(DMW)溶接オーバーレイ が真っ先に挙がります。

原子力分野における典型的な異種金属溶接では、以下のような場合が想定されます:

それぞれの界面で音束は屈折・散乱し、割れと見分けのつかない反射が発生します。当初は、これらの溶接の一部に自動化された A スキャンシステムを使用していましたが、 データは粗いピクセル状で、ノイズも多くありました。「何か」がそこにあることはわかっていながらも、それが何なのか明らかでない限り、見えているものに確信を持つことはほぼ不可能でした。

ある定修時にデータが怪しく見えたが、結局「何かあるかもしれないし、ないかもしれない」という状態でその場を離れたことがありました。次の定修時には、その溶接部から床に漏洩が発生していました。あのとき「問題ないかもしれない」と思ったものが、実は割れだったのです。

こうした経験をすると、謙虚な気持ちにさせられます。

ここで、最新のフェーズドアレイが大きな効果を発揮します。

溶接オーバーレイでは、さらに興味深い展開があります。多くのプラントにおける DMW の漏洩対策は、単純に重ね溶接を施すことでした:元の溶接部と配管の上に厚いインコネル溶接層を被せるのです。これは構造的には機能しますが、超音波検査の観点では問題をより困難にしていました。割れ先端は 1.5 inch 以上深く、減衰の大きい材料と複雑な界面の下に埋もれます。

ここでも、OmniScan X4 128:128PR  のようなシステムのチャンネル数と大き開口が真価を発揮します。

現在、多くの原子力発電所では、オーバーレイの手動検査を検討すらしていません。自動化とフェーズドアレイにより、画像化とカバレッジが格段に向上しています。

スキュー角:リアルタイムで形状と割れを識別

128:128PR のようなパルサー数が多い装置で真価を発揮するにも関わらず、過小評価されがちな機能の一つが スキュー角の設定 です。

溶接検査では、割れに似た形状エコー(ルート、段差、裏当てなど)と頻繁に対峙することになります。違いを見分けて本物かどうかを判定するために、フローチャートのような一連のルールがあります。まず、溶接部の両側から見えるか、次に疑わしい位置にプロットされるか、壁を貫通する深さと、材料内で信号が移動する現象(ウォーク)を示すか、異なる角度で見えるか、そして観測したきずがスキュー角でも保持されるかどうかです。マトリックスアレイから ± 一定の角度で設定されたスキュー角を持つことは、重要な確認手段となります。パッシブ方向のエレメント数が多いほど、より広いステアリング範囲が可能になります。エレメント数が増えると、より多くのチャネルが必要になります。パッシブ軸におけるこれらのスキュー機能は、以下の状況で役立ちます:

プローブの正面からのみの視点で見ると、これらの特徴は、特に内径(ID)で、まさに割れを探しているその場所で強力で鮮明な反射を生じさせることがあります。従来の手法では、ノイズの多いルート部や座ぐりが割れのように「見えた」ため、長年にわたり多くのパイプが切断されてきました。

スキュー角により、状況が一変しました。

スキュー角制御では、ビームを主方向へ誘導するだけでなく、横方向にも誘導します。パルサー数が多いフェーズドアレイユニットでは、以下のことが可能です:

それが重要である理由は次の通りです:

したがって、前方(ゼロ度)に疑わしいエコーがあり、スキュー角では何も検出されない場合、それは形状によるものと考えられます。

前方(ゼロ度)で反応があり、1 つ以上のスキュー角で強く一貫した反応が見られる場合、それは割れのような挙動を示すものを見ていることになります。

128:128 は、これらのスキュー角グループを妥協なく実行するためのチャネル数を提供します。セットアップの切り替えやパラメータの再読み込み、溶接部の再スキャンは不要です。以下の項目をリアルタイムで比較できます:

一度の作業で全て可能です。

熱疲労とオフアクシスの割れ:信頼できる検出範囲

もう一つの難しい問題は 熱疲労です。それらの割れは、熱サイクルと機械的負荷の複合的な作用によって生じるため、不規則な向きで発生することがあります。割れは依然として通常、内径部で表面に接していますが、必ずしもパイプに対して平行または垂直になっているわけではありません。割れが軸から外れて奇妙な方向に走ることもあります。

一般的な X - Y スキャナーと単一のビーム方向を用いた従来のスキャンでは、熱疲労亀裂の真上を通過しても、それを簡単に見逃してしまうことがあります。うまく当たれば反応が得られますが、 そうでなければ、見逃してしまいます。

OmniScan X4 128:128PR のようなシステムに スキュー角と複数のフォーカス深さ を導入することで、次のことが可能になります:

単なるデータ量の増加ではなく、信頼性が高いデータが増えることになります。複数のスキュー角のグループや複数のフォーカス深さをしばらく扱っていると、そこに何かがあれば、いずれかの角度で捉えられると確信できるようになります。

航空宇宙、3D プリンターなどによる積層造形、およびノイズの多い素材

原子力分野以外では、航空宇宙用複合材料における複雑なコア構造、ハニカム構造、および積層造形に携わってきました。これらに共通することは? ノイズが多く、減衰しやすく、そして特殊な素材だという点です。

一部のこれらの材料にはフォームやハニカム構造のコアが含まれているものもあります。一見すると、そのような材料を超音波が通過できるとは思えないでしょう。しかし、適切なプローブ設計と十分なエネルギーがあれば、そこから有用なデータを取得することができます。

ここでも、128 チャネルを使えることが威力を発揮します。

従来のセットアップでは、翼梁やR部のスキャンに複数のシフトと細かいステップサイズを要する事例を目にしてきました。強力なフェーズドアレイユニットで駆動される広範囲アレイへ移行することで、以下のようにスキャン時間を短縮できます:

これは単なる技術的な改善ではなく、生産現場におけるスループット革命なのです。

これらの材料の中には、依然として扱いが難しく、かなりのエネルギーを必要とするものもあります。そのため、私は OmniScan と互換性のある T-800を設計しました。これについては、また別の機会にお話ししましょう。

停止時間、速度およびビジネスへの実質的な影響

原子力分野では、停止期間の時間は莫大な費用に関わります。私のキャリアの初期には、標準的な超音波検査を伴う平均的な停止作業では、現場に約 1 か月滞在する必要がありました。フェーズドアレイが標準化されるにつれ、同じ作業範囲が 10 日から 2 週間 で完了するようになりました。

その大きな要因はスピードです。

以前は 30 ~ 40 分かかっていた単一の溶接部のスキャンが、今では約 60 秒で完了するのを目にしてきました。当初、技術者たちはこのようなスピードによって、自分たちの仕事がなくなるのではないかと心配していました。実際には、仕事がなくなることはありませんでしたが、今では発電所の停止作業がより早く終わり、より高品質なデータと予期せぬ事態の減少によって、より早く稼働を再開できるようになっています。

なぜパルサーの数が多いことが重要なのか

結局のところ、私のキャリア全体を通して一貫して貫かれてきた原則は 1 つでした。

適切なプローブが課題を解決しますが、そのプローブを駆動するには適切な探傷器が必要ということです。

OmniScan X4 128:128PR は、以下の機能を提供します:

もしも、私のキャリアの中で最も困難だった検査(古いステンレス配管の IGSCC、後に漏れた異種金属溶接、埋没亀裂のあるオーバーレイ、航空宇宙分野のノイズの多いコア、減衰性のある積層造形部品)を再度実施できるなら、最新のフェーズドアレイツールと OmniScan X4 128:128PR を毎回必ず持参したいと思っています。

最新のフェーズドアレイは、検査を容易にしただけではありません。
検査の信頼性を高めスピードを向上させ、そして多くの場合、初めて真に「検査可能」になったのです。

Sinewave Solutions オーナー、Paul Hayes 氏