結合B-スキャンで溶接部スクリーニングの時間と労力を削減
溶接部スクリーニングを実行する際に、単にB-スキャンをスクロールするより効率的な方法がないだろうかと思ったことがあるなら、当社のソリューションについて聞きたくなるはずです。当社のOmniScan™ X4探傷器には、この時間と注意力が必要な手法を大きく変える可能性がある、革新的なB-スキャンビューが搭載されています。検証ツールとして使用すると、評価への確信が高くなり、B-スキャンスクリーニングプロセス全体が楽になります。
当社ではこれを結合B-スキャンと呼んでいますが、理由は以下のとおりです。
- 見慣れている断面B-スキャンスライスが取得されて、効果的に重ねられる。
- 次にすべてのB-スキャンが1つの分かりやすいビューにまとまってOmniScan X4画面に表示される。
結合B-スキャンの仕組み
S-スキャンを透明なプリーツ(ひだ)を持つ扇子だと想像してください。結合B-スキャンは扇子を畳んですべてのひだ越しに見るのに似ています。
標準的なPAUTセクタースキャンでは、超音波軸位置ごとに(欠陥指示の深さに関係なく)取得されたデータが、セクタースキャンのビームおよびスキャン位置(スライス)ごとの最大振幅を使って結合されるため、潜在的な欠陥指示が各ビームの伝搬軸と垂直に結合されます。結合B-スキャンはいかなる圧縮も含まない非補正ビューなので、データ損失がありません。
とはいえ、結合B-スキャンを使用する場合に考慮するべきことはほかにもあります。検出性能が最大になるのは、溶接部内にある欠陥指示のビーム路程分布にばらつきがある場合で、これは自然によく見られます。最も効果的なのは第1レグと第2レグの開始部分です。しかし、溶接部とPAUT構成はすべて同じとは限らず、特に溶接部の大部分をカバーするセクタースキャンを用いる場合では、同様のビーム路程で溶接形状による欠陥指示が見られることがあります。調整を行わなければ、これらの条件は結合B-スキャンの使用に適しているとはいえません。しかしありがたいことに、結合に使用する最初と最後のビームを慎重に選べば、欠陥スクリーニングに非常に役立つ結果が得られます。
超音波フェーズドアレイ検査(PAUT)B-スキャンの基本事項
B-スキャンは、慣れている人でも誤って「側面図」と説明することがあります。この説明が正しいのは、0度の検査(肉厚測定など)に関する場合に限られます。溶接部検査で行われるような斜角検査に関しては正確に当てはまりません。なぜなら、斜角セクタースキャンの場合、個々のB-スキャンが実際に表しているのは、表面(または表面に垂直な深さ軸)に対して異なる角度で伝搬するさまざまなビームだからです。
B-スキャンスクリーニング法は、溶接部検査用にフェーズドアレイ(PA)検査員に広く習得され、使用されています。セクタースキャンの場合、あるB-スキャンから別のB-スキャンへのスクロールは、S-スキャンの広がる各ビームによって生成された平面画像を調子を合わせてスクロールするのに似ています。通常、溶接部検査員がB-スキャンデータビューを適用するのは、欠陥指示の深さの評価と、最深部にある欠陥指示の判断を行う場合です。
ただし、この手法による欠陥の識別と評価には、以下を行うための集中力を要するのが一般的です。
- 形状によるエコーと疑わしい欠陥の区別に役立つパターンを認識する。
- 疑わしい欠陥の重大度と深さをB-スキャンごとに比較する。
結合B-スキャンが持つ高度な機能によって、関連する労力がいくらか軽減し、溶接部検査と分析プロセスが合理化されます。標準的なB-スキャンスクリーニング法を補うものとして、結合B-スキャンは評価に確信をもたらします。
結合B-スキャンの上位5つの利点を以下にまとめます。
1.より簡単で迅速にスクリーニングを行う
結合B-スキャンは、検査員の多くの時間と精神的なエネルギーを節約できます。溶接部内で検出されたすべての欠陥指示が1つのデータビューで見られるため、疑わしい欠陥を一目で見分けて、誤解や見落としがないことを確認するのが簡単です。
すべてのデータが1つのビューに表示されることから、形状によるエコーや関連するドリフトと疑わしい欠陥指示をはっきり見分けられます。
さらに、MXU 5.13の更新に含まれる新たなレイアウトや改善事項によって、結合および非結合B-スキャンの両方が見やすくなりました。
- B-S-A単一グループレイアウトには、大きなB-スキャンビューが表示されます
- 新しいA-B-Sマルチグループレイアウトでは、切り替えなしで複数のB-スキャンが表示されます。比較や分析が簡単になるように、グループを個別に結合または非結合にすることができます。
A-B-Sマルチレイアウトでは、画面切り替えの必要なく複数のB-スキャン(結合と非結合)が表示されます。さらに、比較やデータ分析が簡単になるように、グループを個別に結合または非結合にすることができます。
2.画像を鮮明にするために関連する角度を切り分ける
分析に役立つビームのみを慎重に選んで、結合B-スキャン画像をさらに明確にすることができます。データソースパラメーターで最初と最後のビームを調整すると、疑わしい欠陥指示が関係のないエコーから大いに際立つようになります。
3.欠陥スクリーニング評価の正確さを検証する
OmniScan X4のクイックアクセスメニューを使用すると、標準B-スキャンビューと結合B-スキャンビューを簡単に切り替えることができます。B-スキャンデータ表示画面でボタンを長押ししてメニューを開き、次に「Use Active Beam(アクティブビームを使用)」を選択し、「Activate Merged B-Scan(結合B-スキャンを有効化)」を選択します。
ライブデータ収集中だけでなく、データ収集後の分析時にも使用できます。お試しいただければ、すぐに、B-スキャンデータを比較し分析結果を自信を持って検証できるツールとしての価値を実感していただけるでしょう。
4.欠陥の深さを迷いなく確認する
結合B-スキャンでは、最深部にある欠陥指示を示すビームを含むすべてのビームが表示されるため、最も深い欠陥の位置を確認する際に使用できます。表面から遠くにある亀裂に関して、際立った改善がなされていることに気付かれるはずです。
このような欠陥の最深部は、結合B-スキャンのスキャンカーソルを置けば簡単に見つかります。その後、通常どおりS-スキャンで特性解析を完了できます。
5.過去と現在、すべてのデータをくまなく分析・評価
結合B-スキャンは伝搬時間の視点からエコーを「観察」するもので、指向角は大きく影響しません。このことから、結合B-スキャンで欠陥の最深部を目立たせて、その上にカーソルを置くのは簡単です。
前述のように、結合B-スキャンビューはデータ収集中でもデータ収集後でも、OmniScan X4本体とコンピューター上のOmniPC™ ソフトウェアのどちらでも使用できます。OmniPC 6ソフトウェアは、過去から現在まですべてのOmniScanデータファイル形式(.opd、.oudを含む)に対応しているため、以前収集したデータにも結合B-スキャンを適用できます。これにはOmniScan MX2およびSX探傷器で収集したデータファイルも含まれます。
おまけの利点:B-スキャンスクリーニング法の習得が簡単に
B-スキャンの使用と分析を経験したことがある方なら、結合B-スキャンに難なく適応できます。結合B-スキャンには、最深部にある欠陥指示を示すビームを含むすべてのビームが表示されるため、初心者でもB-スキャンスクリーニング法を楽に習得できます。
さらに、B-スキャンのレイアウトとツールがMXUとOmniPCソフトウェアで使用されているものと同じなので、あらゆる経験レベルのOmniScanユーザーがこの手法にたやすく適応して、分析ツールキットを増強できます。もっと詳しく知りたい場合は、お近くのEvident販売代理店にお問い合わせいただき、ひとまず当社のOmniScan X4ウェブページをご覧ください。
ブログ記事は2023年5月4日に最初に公開され、2024年10月21日に更新されました。