アプリケーションノート
超音波フェーズドアレイを使用した摩擦攪拌溶接(FSW)検査
アプリケーションの概要
摩擦攪拌溶接(FSW)技術は、アルミニウム合金などの融接が難しい材質の接合方法として開発されました。溶接品質は非常に高く、試験によると溶接部に気孔がなく、材料構造は均一です。しかし、このプロセスでは検出が難しい、小さく細かい欠陥が発生することがあります。
摩擦攪拌溶接に適した検査方法の一つは、超音波フェーズドアレイ技術です。溶接部の形状からラスタースキャンは不可能ですが、超音波フェーズドアレイであれば、溶接部全断面の検査を1回のパスで行えます。
超音波フェーズドアレイでは、ラテラルスキャンも可能で横方向の欠陥を検出することができます。検査角度を最適化すると、検出の可能性が非常に高まり、超音波フェーズドアレイでカバーされるゾーン数を増やすと、高精度な欠陥のサイズと位置を確認することができます。高速かつ高精度で、幅広い用途に対応可能な超音波フェーズドアレイは、FSW検査に非常に適した技術です。
一般的な検査要件
- 溶接長:最大12m
- 溶接部の厚さ:3~15mm(以上)
- 直径範囲:2.4~5.1m
- 材質:アルミニウム(この技術はFSWで溶接されたあらゆる材質に使用可能)
- 垂直または水平に設置する構造
- ラスタースキャンが難しい変則的な溶接形状
- 狭いアクセス空間
- カップリング状態のチェックが必要
- 全自動検査
検出される不良
- 攪拌不足による接合不良
- キッシングボンド(裏面付近に発生する幅狭な微小亀裂)
- ワームホール(虫食い状の内部欠陥)
- ルート先端のきず
- 軸方向および横方向のきず
- ポロシティー(小さな気孔の集合体)
ソリューションの説明
- 軸方向の検出では溶接部の両側にそれぞれ一つのプローブ、横方向の検出ではプローブをもう一つ追加
- プローブを電動式でポジショニング(溶接部のセンタリング)
- 軸方向の検出では、65°横波(SW)および45°横波(SW)を検査
- 横方向の検出では、45°横波(SW)の屈折角、および-30°、0°、30°のスキュー角を検査
- 全ての構造でビームを電動スキャン
- 全ての検査をワンラインスキャンで実行(最大21m)
- カップリングには局部水浸用ウエッジを使用
コンピューターの全てを空調付きのキャビネットに収容
フトウェアを使用した解析とレポート作成
当社の超音波探傷装置は、超音波フェーズドアレイ、超音波、EMATのいずれを使用しても、同じデータ収集および解析ソフトウェアを使用することができます。このソフトウェアはPC用です。
データ収集および解析
- ソフトウェアがデータ収集システムをセットアップおよび制御
- セクター、リニア、および深度スキャンのフォーカルロウ、およびダイナミックデプスフォーカシングを容易にプログラム
- 自動全断面測定設定
- A-スキャン、B-スキャン、C-スキャン、D-スキャンのリアルタイム表示
- 超音波フェーズドアレイのセクタースキャンをリアルタイム表示
- A-スキャン、C-スキャン、またはピークデータから、角度補正された上面図、側面図、および端面図のリアルタイム表示
- 部品の図面をオーバーレイとしたリアルタイムイメージング
- データを収集しながら解析を同時に実行可能
- 測定カーソルおよびTOFD(Time-Of-Flight Diffraction)測定ツール
- スキャナー制御による自動検査
特殊アダプター付きのROVER
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