導入事例インタビュー:American Magic の高性能複合材ボート検査におけるフェーズドアレイ超音波探傷(PAUT)の活用
はじめに
高性能な複合材ボートには、精密な製造プロセスと厳格な検査が求められます。American Magic(アメリカン・マジック)にとって、非破壊検査(NDT)は構造健全性・安全性・性能を確保するうえで不可欠な要素です。
本記事では、American Magic の製造エンジニアであり、レベルⅡ認証を取得した NDT 検査員である Alek Nilsen 氏にインタビューしました。チームがどのようにフェーズドアレイ超音波検査(PAUT)を行い、大型複合構造物を検査し、突発的な損傷にも迅速に対応し、運用停止時間を最小限に抑えているのかをご紹介します。また、セーリングチームを現地にとどめたまま迅速に検査結果を取得する体制についてもお話を伺いました。
Q:American Magic の概要と、現在の取り組みについて教えてください。
A:American Magic は、国際ヨットレースの最高峰である America’s Cup(アメリカズカップ)への挑戦を掲げ、2017 年に設立されました。現在はフロリダ州ペンサコーラを拠点とし、エンジニアリングおよび製造の中核拠点として活動しています。
当社は、海洋分野および関連産業向けの高性能複合構造物の設計・製造に注力するとともに、競技シーズンを通じてエンジニアリングの専門性を継続的に維持しています。
Q:American Magic でのご担当業務について教えてください。
A:私は構造工学および製造エンジニアリングを専門としており、特に複合材料分野を中心にキャリアを積んできました。設計・製造・エンジニアリング各チームと密接に連携し、構造設計を実際に製造可能なコンポーネントへと落とし込む役割を担っています。
また、非破壊検査(NDT)業務の統括も担当しています。当拠点で唯一のレベルⅡ認証 NDT 検査員として、実際の検査を実施するとともに、エンジニアやマネージャーと協力して結果を解析し、意思決定を支援しています。
当社ヒューストンラボで複合検査ソリューションを検証する Alek Nielsen 氏
Q:複合材ボートの検査において、なぜ PAUT が重要なのでしょうか。
A:PAUT は、品質管理および運用評価の両面において不可欠な技術です。製造中に、ラミネートの品質を検証し、ポロシティや層間剥離などの問題を特定するのに役立ちます。
また、海上での性能確認試験(海上試験)後や落雷などの予期せぬ事象が発生した場合でも、フェーズドアレイ超音波探傷により構造状態を迅速かつ高精度に評価することが可能です。安全マージンが意図的に最小化されている極限の性能を追求する競技セーリングにおいては、こうした迅速かつ高精度な評価が極めて重要になります。
Q:なぜ American Magic は、NDT を社内で実施できる体制を構築したのですか。
A:以前は外部の検査会社に依頼しており、海外出張や事前調整が必要になることもありました。この方法は効果的である一方、遅延や追加コストが発生していました。
社内で NDT を行えるようにすることで、必要なタイミングですぐに検査を実施できるようになり、ダウンタイムの削減や、問題発生時の迅速かつ的確な意思決定が可能になりました。
Q:大型複合構造物の検査にはどのような NDT 機器を使用して
いますか。
A:当社では、フェーズドアレイプローブを搭載した OmniScan X4 と RollerFORM XL スキャナーを使用しています。この構成により、大型の炭素繊維構造物を効率的に検査しながら、
欠陥の詳細な特性評価に必要な分解能を確保できます。
この組み合わせは、複雑形状や広い表面積を持つ複合材の検査において、特に有効です。
Q:フェーズドアレイ超音波探傷は、検査スピードや意思決定にどのように貢献していますか。
A:検査結果を非破壊検査の専門家ではないエンジニアや管理者に迅速に伝える必要がある場合、鮮明な超音波画像が不可欠です。
超音波フェーズドアレイ検査データの高い視認性により、欠陥指示を高い確度で識別できるため、結果の解釈や次の対応判断に要する時間を大幅に短縮できます。
Q:社内で実施した非破壊検査が大きな効果を発揮した事例を教えてください。
A:最近の海上試験後、想定外の構造損傷が確認されました。その際、現場に PAUT 装置があったため、損傷範囲を即座に評価することができました。
その結果、当初想定よりも広範囲に損傷が及んでいることが判明し、信頼性の高いデータに基づいて運用を停止し、適切な修理計画を立てることができました。
Q:非破壊検査はどのくらいの頻度で実施していますか。
A:検査頻度はプロジェクトによって異なりますが、製造や試験が活発な期間には、週に数回、場合によっては毎日 PAUT を実施することもあります。
高性能ボートは大きな荷重を受けるため、定期的な検査は日常業務の重要な一部となって
います。
Q:当社チームとの協業についてのご感想をお聞かせください。
A:非常に満足しています。特にコミュニケーションの質の高さが大きな決め手となりました。
私はあまり多くを話すタイプではないのですが、いざ話すと、皆さんがすぐに意図をつかんで的確な対応をしてくれます。ヒューストンで過ごした時間も非常に有意義でした。滞在は短期間でしたが、非常に密度の高い内容でした。
例えば、別の非破壊検査機器の会社から見積もりが届く頃には、御社の営業チームがすでに現地でデモを実施していました。その対応の早さは印象的でした。私たちは状況に応じて迅速に判断を下す必要があるため、こうしたスピード感は非常に重要です。v日々状況が変化する環境の中で、同じテンポ感で動いてくれるパートナーがいることは心強いものです。すべてに満足しています。そして、総合的に見て御社を選ぶことは自然な決断でした。
ご対応とご支援のおかげで、競合他社よりも御社を容易に選ぶことができました。
Q:今後、American Magic の複合材に対する非破壊検査の体制はどのように進化していくとお考えですか。
A:製造活動の拡大に伴い、非破壊検査は日常業務のワークフローにさらに深く統合されていくと考えています。PAUT は今後も、品質・安全性・性能を支える中核技術として重要な役割を担い続けるでしょう。
まとめ
PAUT を社内に導入したことで、American Magic は高性能複合構造の検査能力を強化し、ダウンタイムの削減と確信を持った意思決定を実現しました。
本事例は、当社の先進的な非破壊検査ソリューションが、大規模かつ複雑な複合材構造を扱う組織において、厳しい環境下でも高い効果を発揮することを示しています。